AI作曲ツールはどんな使われ方をしているのか。ネット上の記事の多くは推測で語られていますが、私たちは実際の数字を数えてみることにしました。対象は2026年4月3日から10月11日までにEvasongへ届いた作曲リクエスト3,275件で、送信元のアカウントは1,404件です。どんなテーマで歌を作るのか、どんな音を求めるのか、最初の仕上がりに満足できなかったときにどう動くのか。そのすべてを集計しました。
結論を先に言えば、多くの人は自分で書いた歌詞を持ち込み、身近な誰かのことを歌にしています。そして英語以外の言語で歌を作る人が大半でした。
Evasongでは作り方を2通りから選べます。ひとつは曲のイメージを一文で伝えてAIに歌詞まで書いてもらう方法、もうひとつはカスタムモードに切り替えて手元の歌詞を貼り付ける方法です。手軽な一文モードが圧倒的だろうと予想していましたが、結果は違いました。
3分の2近いユーザーが、少なくとも1回は自作の歌詞を使っていました。しかも短いフレーズではありません。投稿された歌詞の中央値は約1,300文字で、3分ほどのフル尺の曲に相当する分量です。歌詞全体の半数は、Verse や Chorus といったセクション名がすでに付いた状態で送られていました。適当な1曲が欲しいのではなく、伝えたい言葉がはっきりあって、それを歌にしたい人たちだと言えます。
曲の内容を自分の言葉で説明した664人について、よく登場したテーマをまとめました。ひとつの説明に複数のテーマが含まれる場合もあります。
| テーマ | ユーザーの割合 |
|---|---|
| 恋愛・ロマンス | |
| 友人・パーティー・お祝い | |
| 家族・子ども | |
| ラップ・ヒップホップ | |
| 誕生日 | |
| 失恋・悲しみ | |
| 信仰・賛美 | |
| 結婚式・記念日 |
浮かび上がるのは、とても個人的な使われ方です。依頼の多くは、恋人や子ども、もうすぐ誕生日を迎える友人など、特定の誰かに向けた歌、あるいはその人について歌った曲でした。結婚式は想定より少なめでしたが、これはラブソングとして説明されるケースが多いためだと考えられます。
カスタムモードでは、求める音のイメージを自由に書き込めます。実際に書き込んだ754人の指定内容で、多かったものは次のとおりです。
| 指定内容 | ユーザーの割合 |
|---|---|
| 男性ボーカル | |
| 女性ボーカル | |
| ピアノ | |
| アコースティックギター | |
| ドラム | |
| ベース | |
| 明るい雰囲気 | |
| ロマンチックな雰囲気 | |
| エネルギッシュな雰囲気 | |
| ミドルテンポ | |
| スローテンポ | |
| バイオリン |
目を引く点が2つあります。まず、ジャンルよりも声が重視されていること。誰に歌わせるかは最もよく指定される項目で、男性ボーカルと女性ボーカルの比率はほぼ半々でした。次に、人気の楽器がピアノ、アコースティックギター、バイオリンといった温かみのあるアコースティック系に集中していることです。誰かに贈るための歌が中心なので、クラブ向けのトラックよりバラード寄りになるのは自然な流れでしょう。
数は少ないものの、インストゥルメンタルも安定した需要があります。ボーカルなしの曲を1回以上生成したユーザーは14%で、主に動画のBGMとして使われているようです。
各ユーザーの最初の1曲について、書かれた歌詞または説明文から言語を判定しました。判定できた1,192人の内訳は以下のとおりです。
| 言語 | ユーザーの割合 |
|---|---|
| 英語 | |
| スペイン語 | |
| アラビア語・ペルシャ語・ウルドゥー語 | |
| フランス語 | |
| ポルトガル語 | |
| イタリア語 | |
| ドイツ語 | |
| ロシア語・ウクライナ語 | |
| 中国語 | |
| ヒンディー語 |
英語以外で書いたユーザーは10人中6人。2位のスペイン語は他を大きく引き離し、アラビア文字を使う言語のグループはフランス語より大きな割合になりました。母国語で歌詞を書くのは少数派どころか、むしろ多数派なのです。最近のAIボーカルはこうした言語の大半に十分対応しており、翻訳した歌詞よりも、最初からその言語で書いた歌詞のほうが自然な仕上がりになる傾向があります。
自作の歌詞から曲を完成させたユーザーは412人。そのうち34%が、同じ歌詞のまま再度生成していました。再挑戦の前にスタイルの説明を書き換えた人は、その中の91%とほぼ全員です。
つまり、歌詞は自分の力で仕上げておき、AIにはアレンジの聴き比べをさせている、という使い方です。テンポを落としてみる、男性の声を女性に変える、ギターをピアノに替える、といった具合です。最初に出てきた曲は歌詞への最終評価ではありません。サウンドの下書きくらいに考えておくのがおすすめです。
集計の対象は、2026年4月3日から10月11日までにEvasongで行われたすべての音楽生成リクエスト(1,404アカウントから3,275件)です。割合はリクエスト数ではなく人数で算出しているため、極端によく使う1人の影響で結果が偏ることはありません。扱ったのは集計値のみで、個々の歌詞やプロンプト、楽曲を引用・公開することは一切していません。
テーマと言語はキーワードの一致で分類しています。そのため、これらの数値は厳密なカウントではなく、おおよその推定値としてご覧ください。また、スタイルを何も選ばなかった場合は生成側が自動で「Pop」を入れる仕様のため、この初期値はスタイル分析から除外しました。スタイルに関する数値は、ユーザー自身が入力または選択したものだけに基づいています。